軽量化と剛性を考える
ここのところ、車のタイヤの重さをあらためて実感すること多く、昔習ったことを実生活にあてはめてみた。
最近はこんな思考回路が殆ど機能しなくなったので、どこか間違っているかも。
自動車工学上、操縦安定性を向上させるためにバネ下重量を軽減させるのは常識であって、自動制御では、バネ+ダンパー+質量系という典型的な機構。ここで質量を小さくすることが、外乱に対して制御性能を向上させられることを学ばされた。実際に理解したのは卒業後何年か経ってから、産業機械の設計に携わるようになってからだった。
自動車の場合その一手段として、鉄製ホイールに換え、アロイホイールにしてホイールの重量減による効果を狙う…筈なのだが、鉄とアルミ(合金)の密度比7.8/2.7と、弾性係数比2.1/0.75は、ほぼ逆比で一致し、鉄材料と同じ剛性(変形耐性)を(同じ形状で)持たせるためには、同じ重量のアルミ(合金)が必要ということになってしまい、そうでない場合は得られた軽量化は剛性の低下となって表れる。
実際には、アロイホイールの方が形状設計の自由度が高いので、各部の応力を最適化することで軽量化は達成されてきた。ところが、昨今のようにスポーツタイヤの扁平化に伴い、ホイール径を上げ、タイヤをより扁平化させる、いわゆるインチアップという手法がとられるようになってから、少し様子が変わった。
ホイールの大径化による、ホイール重量のアップは一般には避けられない事実。車輪の(一般走行には無用なほどの)トラクション向上と横剛性アップのための扁平化であった筈が、バネ下重量を増すか、剛性の低いヘナヘナホイールに改悪してしまうことも起こる。
軽量アロイ(一般にはアルミ合金)ホイールは、鍛造(温間や亜温間)という製法が(高価だが)採用されることが増えてきたが、ここで勘違いされやすいのが、鍛造によって材料強度が増すので薄肉化による軽量化が出来るわけであって、強度が増しても弾性係数が増すわけではないという点である。結局のところ過度に軽量化された鍛造ホイールは、壊れないけど、剛性の低いフニャな製品になるわけであって、それでは操縦性は損なわれてしまう。
さて、今回A3に新調したエンケイのGTC-01であるが、これにはMATプロセスとよばれる製法が採用されている。驚いたことにディスク部とリム素材部を鋳造後、リム部はさらにスピニングで成形するという手法である。
鍛造ホイールのように高価な金型を不要とし、さらに適用車種を広げるために必要なリム幅やオフセットを広範囲に対応できる。
暫く車の趣味から離れていたが、こんな技術が民生品に実用化されていることに少し驚かされた。
6.5J-16から8J-18にサイズアップしても、大きな重量増を伴わず(賢く)選択できたのは、依然世界の頂点にある日本の素形材産業の高い技術力の結果である。衝動買いだったけれども、決して悪い選択でなかったという自己弁護のための考察かな。
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